教科解説
教科ごとに特色ある教育
桐朋女子が練り上げてきた教科ごとの特色ある教育は、社会で活躍する人を育てています。
国 語
【“論理的に、読み、考え、書く力”を養います。】
「ことばの力の育成」の特徴は、英語よりも前に日本語を自在に操る力を体系的に育てるという点にあります。どんな言語を用いる場合も、以心伝心のできない初対面の人とは、きちんとした筋道にのっとってやり取りをしなければ、コミュニケーションは成立しません。この筋道が「論理」です。論理的に考えることで、他者とのコミュニケーションが円滑に進められます。私たちにとって日本語は、自然にある程度身についているものなので、これまではあまり意図的に学習しようとはしてこなかったはずです。そこで日本語の規則を意図的に学習し、論理的思考を養うために「論理エンジン」を導入しました。中1~中3で、「論理エンジン」OS1~OS3を副教材として使用しています。あくまでも問題集ではないので、教科書の学習内容と照らし合わせて、「論理エンジン」のどの単元を取り上げるのか、何をここで学ぶのか、という目標を明確にし、扱う順番をしっかりアレンジして進めていきます。
また「論理エンジン」にはゲーム感覚で取り組めるものもあり、楽しく学習していくことができます。例えば、グループでのアクティブラーニングにも適した教材です。グループによって異なる解答が出た場合は、どちらがよりよい解答なのかを議論もしています。
自主作成テキストを使い国語学習の土台を確かなものにします
中学では漢字の試験を、高校では古典文法や古文単語の確認試験を定期的に実施し、基礎知識の確実な定着を図ります。また、古典学習は「慣れ親しむことから始まる」という考えのもと、”桐朋女子独自のテキスト”[「古文入門」「漢文入門」「国語の文法」]を使って、中学1年から古典を学んでいきます。名作古典の冒頭や百人一首などを暗唱し、作品の読解・鑑賞にじっくり取り組みます。
仲間と切磋琢磨しながら「思考・判断力」と「表現力」を育てます
各学年で作文やレポートなどを課し、日々の授業ではスピーチにも力を入れています。作文やレポートに継続的に取り組むことで書く力が高められ、「思考・判断力」の土台を作りあげることにもつながるのです。
高校1年では、芥川龍之介『羅生門』、太宰治『富嶽百景』、高校2年では、夏目漱石『こころ』、中島敦『山月記』、高校3年では、森鷗外『舞姫』の課題レポートや論述テストなどを課します。また、高校1年の言語文化と高校2年の文学国語の学習では、年間10冊程度の課題図書を設けています。記述テストやテーマを問う課題図書カードにより、「表現力」を養い更なる読解・鑑賞力の涵養へとつなげていくのです。高校2年の国語表現では、様々な言語表現に挑戦し、他者の評価を受けながら「表現力」を磨いていきます。
本物にふれることで文学や古典の世界を「体験」します
年に1回、中学生学年対抗での百人一首大会を実施しています。中学3年の東北研修旅行、高校2年の関西研修旅行の際には、その地域にゆかりの古典や文学の世界を味わうことができますし、他にも学年行事として、歌舞伎や狂言、落語などの古典芸能鑑賞を体験する場も設けられています。
社 会
“見学”から始まるレポート作り
社会科では中学1年から中学3年まで、各学年の授業内容に応じて社会科見学を実施しています。中学3年では、6つの見学コース【裁判の傍聴(ぼうちょう)やユニセフ見学など】の中から自分自身が興味関心のあるコースを選択して見学します。見学の後には、社会科見学をもとにしたレポートを作成することになります。生徒自身が問題意識を持ってテーマを決めて、見学の際に見たことや、本などで調べたことをもとにして、自分の考えをまとめていきます。
生徒が“授業”の担当者
高校2年の「公共」では、発表学習を行っています。人口問題や環境問題・青年期の課題などの現代社会に関わる具体的なテーマの中から生徒が一つ選んで、“授業”を行います。“授業”を行う生徒は、あらかじめテーマについてよく調べた上で、内容をプリントにまとめます。さらに、担当の先生と細かい打合せをして、“授業”の本番にのぞみます。“授業”の後には先生が解説をしてクラス全体の理解を高めます。発表学習を通じて基礎的な知識を身につけ、その知識を活用する力をのばしていきます。
オンリーワンの“時間割”
Cブロック《高校2年・3年》では、世界史や日本史・政治経済等の科目の中から生徒一人一人が自分で選んで時間割を作ります。自分に興味のある科目を中心に選ぶ人もいれば、自分の進路に必要な科目を中心に時間割を組んでいく人もいます。大学入試に向けて過去の入試問題などを解く“演習”の授業では、大学受験に対応できる力をつけることができます。また、一つのテーマについて生徒自身が報告をしたり議論したりするゼミナール形式の“総合社会特講”や、学校外での測量なども経験できる“地理実習”といったユニークな授業もあります。
数 学
基礎練習から始まり数学的リテラシーを鍛え、学力の充実を目指します。また、生徒一人ひとりに合わせたきめ細やかな指導を行っています。
Aブロック(中学1、2年)
基礎学力の定着に重点を置いた少人数制の授業を展開しています。継続的に行う「計算テスト」では、数学の基礎となる計算力を養っています。テスト直しノートを活用した細かなやりとりを通して、生徒の理解度を確認するとともに、学習の定着を図ります。また、中学2年では、更なる学力向上を目指すためにコース別授業が展開されています。
Bブロック(中学3年、高校1年)
中学2年生での経験を生かしながら、自分に適したコースを選び、学習をしています。生徒一人ひとりの自覚と責任の下、コース別授業が展開されています。どのコースも基礎学力の完成はもちろん、更に力を伸ばすための自主的な取り組みで、発展的な問題にも挑戦し応用力を養います。また、各学年の学習内容に加え、上級学年の内容を一部前倒して学習しています。
Cブロック(高校2、3年)
これまでの学習に比べ、より発展的な内容を扱うため、必修科目の「数学Ⅱ」以外は自由選択制となります。その中の1つである「数学演習」では、個々の進路や目標に合ったコースを選択し、大学受験問題に対応するための総合力を養います。
理 科
自然から学ぶ、体験して学ぶ(本物に触れる)
自然現象を理解するために、本物に触れることが重要であると考えており、実験・観察実習を多く取り入れ、科学的に探究しながら授業を進めていきます。体験を通して、生徒自らが思考・考察し、発見や理解を重ねていくことを大切にしています。一方で、科学的知識も必要であり、あわせ持つことで広い視野を持って物事を見渡すことができ、論理的思考力を育むことにもつながっていきます。
基礎基本を大切に
中学1年では、身近な生き物、地震や火山について学ぶ「理科A」と、身のまわりの物質や、光と力など身近で起こる現象などに注目した「理科B」を学習します。2年からは物理・化学・生物・地学と4分野にわかれ、それぞれ専門の教員による授業へと進んでいきます。中学校では、疑問を解決していくための基礎知識の習得だけでなく、実験・観察実習をしっかりと行っていくために、器具の扱いや正しい操作を身につけることにも力を入れています。
体系的な自然科学の世界へ
高校では、1年で「生物」「化学」の基礎を学び、2年で「物理」または「地学」を選択し、体系的に自然科学を学びます。中学で習得した基本をもとに、より高度な実験・観察実習を行い、3年での選択授業へとつなげていきます。夏に4泊5日で実施される「生物野外実習」、天体観測ドームを利用する「星を見る会」、春・夏あわせて行われる「化学実験実習」などもあり、より深く科学の世界へ入っていくこともできます。
保健体育
「こころの健康 からだの健康」。生涯体育へつなげる教育を目指す
中学では、1年間を3期に分けて様々な種目を通し、多くの技能・ルールを学びます。個人種目では、個別に課題や到達目標を設定し、種目終了時までにどれだけ上達できたかを評価しています。団体種目では、グループ学習を行う中で互いが協力し合い、作戦立てや技能向上に努めます。特にバレーボールは、ボールの扱いが難しいため、中学2・3年で行うことで個人技能習得から連続性のあるプレーを身につけることを目指しています。
実技種目は選択制
桐朋女子の体育で最も特徴的な授業形態は、高校の体育です。3学年共通で10種目(バレーボール・バドミントン・バスケットボール・テニス・ダンス・アーチェリー・ハンドボール・サッカー・卓球・水泳)あり、高校1・2年で4種目を選択し、半期毎に種目を入れ替えます。3年では、得意な種目を通年で1種目選択し、ハイレベルな授業が展開されます。
様々なスポーツを楽しむ(自由選択)
高校1年・高校2年には「キャンプ実習」が選択できます。高校2年には「スキー実習」が選択できます。また、高校3年においては、ゴルフやアイススケートなどの様々なスポーツを楽しむ科目(体育特講)も選択することができます。
いのち、それをとりまくもの 6年間の保健学習
中学3年間で身体の仕組みを学び、コミュニケーション能力を高めることを目指します。高校では、1年で男女の身体や性感染症に関する理解を深め、自己決定力を高めることを目的としています。2年では、現代社会における健康問題に着目し、後期では発表学習形態の授業をしています。3年では、脳と心について学び、さらに卒業後も心身の健康に関して問題意識を持つきっかけとなるようなテーマを学びます。
芸術科
豊かで自分らしい表現を育てる(Aブロック 中学1年・中学2年)
Aブロックでは芸術(音楽・美術・書道)の基礎を学びながら、様々な表現方法に触れていきます。
音楽、美術、書道はクラス単位の授業です。
音楽 中学1年・2年(週2時間)
「歌唱」「キーボードを中心とした器楽合奏」「楽譜の基礎」「鑑賞」などを行います。
美術 中学1年・2年(週2時間)
「対象を観察して描く写生」「イメージをデザイン的に表現する作品」「木や粘土を材料とした立体作品」などを制作します。
書道 中学1年(週1時間)
「毛筆」と「硬筆」で文字を正しく整えて書くための基本を学んでいきます。書体は普段書いている「楷書」に加えて、新しく「行書」も習います。
興味関心を深める(Bブロック 中学3年・高校1年)
Bブロックでは興味関心を持った芸術の分野を選択します。選択することで、より技能を高め、表現感情を豊かにします。
芸術 中学3年生(週3時間)
中学3年は音楽・美術・書道を併せて「芸術」とし、「主専攻・副専攻」という選択をします。
主専攻 週2時間は、音楽・美術・書道から1つ選択。
副専攻 週1時間、音楽・美術・書道を循環形式で学習。1年を3期に分け、3期目は「主専攻で選択した科目を週3時間」学びます。
芸術 高校1年生(週2時間)
音楽・美術・書道から1科目を選ぶ「必修選択」です。
個性の開花―専門性を高める(Cブロック 高校2年・高校3年)
Cブロックでの芸術の授業は「自由選択」となります。
これまでに培ってきた表現・感性をさらに高め、より深く学んでいきます。高い専門性と進路にも対応できるカリキュラムを選択できます。
音楽はクラシック、ポピュラーなど様々なジャンルに触れます。美術・書道は高校3年生で「卒業制作展」を行い、6年間の集大成である完成度の高い作品を展示します。
外国語
Aブロック 基礎力の定着
中学1年生では、基礎的な英語の表現を学ぶことから始めます。また、教科書の学習だけでなく、自己紹介などのスピーチを通して、実際に英語を使う練習もします。中学2年生からは、丁寧に学習する標準コースと応用的な学習を含む発展コースに分かれて学びます。自分の考えや将来の夢などについてのスピーチも行います。中学のはじめの2年間は、英単語の学習や音読を習慣化させ、英語学習の土台をつくる大切な期間です。なお、アドバンストコース(2019年度中学1年生より開始)では、別の教材を用いてさまざまな発展的表現を学び、英語力を伸ばしていきます。
Bブロック 表現力の育成
Bブロックでは、Aブロックから始めたスピーチ活動をさらに発展させて、表現力をつけていくことを目指します。Aブロックで築いた基礎力をもとに、スピーチ活動では魅力ある、そして説得力のあるスピーチを行えるよう段階的に学習していきます。また高校1年生では、オンライン英会話を導入しています。相手が話す内容を聞きとることはもちろん、英語を発話する絶対量を増やし、スピーキング力を養います。英語を聞く力、英語で伝える力を鍛えるこの2年間は、基本的な英語力に加え、豊かな表現力を備えたスピーカーとしての一歩を踏み出す期間です。
Cブロック 総合力の完成
Cブロックでは、自由に選べる授業が増え、さらなる英語力をつけることを目指します。例えば‟Dual Language General Studies”では、高校2年生と3年生が合同で授業を行い、日本語と英語の両言語を用いて、様々なトピックについて話し合います。高校3年生の「英語演習」では、大学受験に備えて読解力を伸ばすことを目指します。個々の目標に応じて自分で授業を組み立て、総合的に英語力を高めていきます。
家庭科
みて学ぶ
繊維・糸・布:繊維をより合わせる、糸をほぐす、羊毛からフェルトを作るなど、実際に作って観察することでその性質を理解します。
洗剤実験:洗剤や水の中で、油やすすの汚れが落ちる様子を観察します。
燃焼実験:綿や絹など、異なる繊維でできた布を燃やして、燃え方や匂い、すすの状態を観察します。
つくって学ぶ
調理実習:中1~高2は年に3,4回行う他、高3の選択科目「食物」で行います。米飯を炊く、和風だしをとる、青菜をゆでる、という基本から始まり、高校では和食・洋食・中国料理などを作ります。「食物」ではさらに高度な技術に挑戦します。
被服実習:中1ではお弁当袋、中2ではバイヤスを利用したエプロン、中3では染色、高2ではこぎん刺しを製作します。高3の選択科目「被服」では、浴衣やパジャマなどを製作します。
くらべて学ぶ
包丁日記:長期休暇に食材を切る課題です。食材ごとに異なる感触に目を向けたり、包丁の扱いがどれだけ上達したかを確かめたりします。
和服と洋服の比較:10分の1の大きさの和服と洋服の模型を作り、平面構成と立体構成の違いを比較します。
和食と洋食の栄養比較:和食と洋食のメニューで調理実習を行い、使ったメニューの栄養素を調べ、必要な量をどれだけ満たしているかを比較します。また、食品成分表を見て1つの食材にはいくつもの栄養素が含まれていることを理解し、食材の特徴、栄養素の働きを学ぶことへとつなげます。
ディベート:現代の家庭をめぐる問題をテーマにディベートを行います。まず、一人一人がレポートをまとめ上げ、その後、グループに分かれて準備し、討論します。一つの視点からだけではなく、出来るだけ多くの視点から物事をとらえることで、たくさんの考え方を意識できるようになります。
縫い代の始末:ジグザグミシンや三つ折り端ミシンなど、布端がほつれないように行う縫い代の始末の仕方を4種類実践し、比較します。
情 報
身の回りの情報を活用し、確実に発信する能力を育む
中学校の技術家庭科の技術分野「情報の技術」で学習してきた内容を、高校では「情 報Ⅰ」という科目として、高校1年生で週に2時間授業を行い、学習を深めていきます。
そこでは、”伝えたいこと”をより正しく伝えるために、どういった情報の”伝え方”を意識したらよいか、ポスター制作を通じて学んでいく実習や、コンピュータの仕組みを理解し、どのようなアルゴリズムでプログラムが実行されているのか、Pythonというプログラム言語によるプログラミング活動を通じて学んでいく実習を行います。
これらの実習を中心とした学習活動を通じて、現代のICT環境下において、身の回りの情報を正しく分析・収集し、自分の考えをよりよく発信・表現する方法を学んでいきます。そして、ICTに依存するのではなく、自らの目的を達成するために、適切に情報を活用することができる基礎的な知識や技能、情報化社会とうまく付き合っていくためのモラルとスキル、すなわち情報リテラシーを身につけていくことを目標としています。
道 徳
“桐朋教育”の原点を学び、“他者を尊重できる、自律した社会の一員”になることを目指します。
2019年度より、中学校の3学年において「道徳」が「特別の教科 道徳」と位置付けられました。
桐朋女子の「道徳」では、教科書にある様々なテーマを、それを扱うのに最も適したタイミングで学習していきます。「考え、議論する道徳」と言われているように、一人ひとりが文章を読み理解し、それぞれが意見や思いを表現し合い、他者と考えを共有することにより、物事を多面的・多角的にとらえ、よりよい行動につなげていく力を養う、それが「道徳」の時間です。
総合的な学習・探究
Aブロック 新たな仲間との和、ソーシャルスキルを身につける
入学後2年間を過ごすAブロックでは、自分を見つめながら、新たに知り合う仲間たちと触れ合い、チームをつくることが大きな課題です。したがって、総合的な学習の時間の企画も「私づくり・仲間づくり」を目指す内容のものとなります。もちろん、合宿や行事などの共同作業も大きな意味を占めています。
コミュニケーション能力を育てるために、各学年、カウンセラー等の協力も得て、より良い人間関係づくりを意識し且つ実践していけるようなプログラムを工夫しています。集団生活へ適応は社会に踏み出す第一歩 、そのためのソーシャルスキルを身につけることが目標です。
Bブロック 自己の探究から他者の探究、社会の探究へ
Bブロックでは、自律的学習者を目指した探究活動を行います。探究に必要な活動のスキルを学び、自らの興味・関心に応じてテーマ ・プロジェクトを設定します。中3・高1では、この活動を「T-Project」とよんでいます。
ここでも自分との対話、他者との対話(マインドフル・リスニング)が重要です。実際の活動(フィールドワーク)を通して探究に必要な情報を自ら収集する際には、他者との信頼関係を築くこと(ラポール)の大切さを経験的に学びます。学内にとどまらず外部からお招きするゲストとの交流や、研究機関とのオンライン交流等を通して視野を広げるとともに、将来の自分のイメージを思い描く基礎作りを目指しています。
自らのプロジェクトのまとめは、ポスターセッションとして発表し、互いに評価し合います。1~2年では十分な結果が得られないことも多く、このような活動を通して新たな課題を見つけます。その課題は次年度以降、あるいは今後の人生をかけて探究し続けるものとなるかもしれません。
Cブロック 進路を見据える
Bブロックでの探究活動を更に発展させ、プロジェクトは論文形式でまとめます。また、探究を自分の進路と関わりの深いものへと昇華させ、将来の自分像を明確にしていきます。卒業後の進路として希望する大学を身近なものとするため、いくつかの大学の先生方に行っていただく模擬授業や卒業生や保護者の講演会を通して、将来の希望を実現する進路選択を考えます。本校にはそのためのCブロック自由選択制が置かれています。