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校長コラム

ウクライナとロシアからの帰国生が見ていた日常

 今回のコラム欄は、終業式でお話しした内容を要約したものです。

 最近大きく報道されているニュースは、ウクライナへのロシア侵攻です。アメリカが、ロシアが侵攻する可能性があると以前から警告していました。まさかそんなことはないだろうと思っていたら、その警告通りにロシアはウクライナに侵攻し、私は驚きました。

 桐朋女子には多くの帰国生の方が通っています。現在も20数か国から帰国した90名以上の方が在籍しています。この中にウクライナからの帰国生もいるのではないか。そう思って調べてみました。今通っている皆さんの中には、ウクライナからの帰国生もロシアからの帰国生もいないようですが、調べてみると、過去にはウクライナからの帰国生もロシアからの帰国生もいました。

 図書館に「帰国生の眼」という赤い表紙の作文集が設置されています。これは、帰国生の方が入学する際、現地での生活や学校の様子を作文に書いてもらい、整えたものです。それを改めて読んでみました。ウクライナからの帰国生の作文は20年ほど前のものですが、そこには桐朋生が自ら経験したキエフでの生活の様子、学校の様子が書かれています。それは、普段の何気ない日々です。家にはメイドさんが一日おきに来てくれてウクライナ料理のおやつを作ってくれたり、一緒に遊んでくれたこと。作ってくれたおやつはワレーニキというぎょうざのような食べ物や、ボルシチだそうです。家のそばにはあまり車が通らない大通りがあって、そこでは馬車に乗ったり、乗馬をしている人がいたこと。キエフで通っていた学校の活動の一つとして孤児院にボランティアに行ったこと。その際ウクライナ語で歌を歌ったら、とても喜んでくれたこと。飾らない言葉で書かれているからこそ、伝わるものがあります。今回のロシア侵攻でメイドさんはどうなさっているでしょうか。孤児院はどうなったのでしょうか。

 一方のロシアからの帰国生の作文も読みました。7 年前、10年前に書かれたものです。こちらも、桐朋生の眼で見た普通のロシア市民のことが書かれています。ロシア人は、日本人のように理由もなく笑ったりしないので暗いと思われがちだが、心を許せばたくさん話し、笑うこと。ロシア人は怖そうなイメージがあるが、実はものすごく楽観的なこと。子供にはとてもやさしく、9 歳の妹がスーパーでトイレに行きたくなった際、長蛇の列の最後尾に並んだら前にいたお姉さんが「小さい子たちに前に行かせてあげて」と声をかけてくれ、20 人以上の人が列を譲ってくれたこと。冬はマイナス30度まで下がるが、モスクワは風が吹かないので、防寒具を着れば日本より暖かく感じること。ロシアは資源大国なので暖房は完備し、家では冬でも半袖短パンで過ごすこと。

 こういった生活経験のある方は、今回のロシアのウクライナ侵攻をどのように捉えているでしょうか。ロシアにはロシアの言い分があるようですが、たとえどんな言い分があるにせよ、このような侵攻が正当化されるものでもありません。遠く離れた日本でできることは限られているでしょうが、私たちにまずできることは、関心を持つことです。関係ないやではなく、関心を持つこと。例えばシェルターに避難していると報道されていますが、シェルターがあることに、驚きませんか?日本にはシェルターはないですよね?今回のために急ぎ作ったわけではないようです。どうしてあるんだろう?そういったことでもいいと思います。関心を持つこと。意識してください。

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