テストはレントゲン
6月27日から29日まで、テストゾーンでした。テストゾーンという言葉、他校の方には聞きなれない用語でしょう。どの学校にもその学校独自の用語がありますが、テストゾーンは桐朋女子独特の用語だろうと思います。桐朋女子では、1969年、一斉テストを廃止しました。その前年、1968年度の記録を見ると、「9月10日一斉テスト第一日」「2月27日期末テスト第二日」と書かれており、今の桐朋女子ではありえないその文言に驚かされます。
一斉テストを廃止した経緯として、まず挙げられるのが通知表の廃止です。1971年発行の創立30周年記念誌には、次のように書かれています。
(通知表の欠陥は)「抽象的な点数によって、重大な判決を生徒に告げ、それによって、ある者は“デキル生徒”になり、ある者は“デキナイ生徒”という烙印を押されてしまう。しかもそれを見る親たちは、その数字の裏に隠されているものを見ようとは決してしない」。そして「昭和44年度からは、一斉テストを廃止した。一斉テストを続ける限り、安易な点数による判決からは依然として脱することはできなかったのである」とあります。単に点数だけで生徒を評価しない、途中の過程、プロセスも含めて評価対象とすることは、当時から大切にされていました。
一方、1969年7月発行の学校新聞「山みず」の論説欄に、おそらく編集部員であっただろう生徒が、次のようなことを書いています。
(一斉テスト廃止により)「学習上のけじめが全くつかなくなってしまったということになるだろう。事実、5月の連休明けから今までの約2か月間、私たちは毎日を試験、試験と追い回されて過ごしてきた。今思い返してみても、残っているのは試験の思い出ばかり。一教科が済んだと思えば、数日後に別教科の試験がひかえているといった調子で、考えただけでも精神的にまいってしまう」
生徒に相当の負担がかかったのは間違いないようです。校長へのインタビューで「テストは、絶えずやるべきだと思います」という回答があったように、テストの回数は減らず、あちこちでテストが行われていたようです。
この負担を軽減させるために設けたのが、テストゾーンです。単元テストが重なる6月末、11月末、2月末はテストだけの日を設け、その前後2週間で行う予定の試験は、このテストゾーンで行うようにまとめました。この形式が今日に至るまで30年以上、定着しています。
桐朋には、「テストはレントゲン」という言葉があります。レントゲン検査は、体の具合の悪いところの有無を調べるための検査です。テストもそれと同様、自分の理解が正しいかどうか、不十分なところはないかを調べるもの。テストを単元テストと位置付けているのは、その単元で学習した内容が定着しているかどうかを調べるためのもの、という捉え方をしているためです。もちろんこのテストの結果も成績をつける大きな材料になりますが、第一義的に、テストは成績をつけるために実施するものでない、という点を大切にしています。
テストの結果、具合が悪いところが見つかったら、その手当をしなければなりません。その手当にあたるものがテスト直しです。テストが返却されたら、それをノート(多くの場合、テスト直し専用のノート)に貼り、間違えた問題を解きなおします。間違えた部分は、自分の弱点なので、そこを補強するのがテスト直しです。この習慣がしっかり身につくと、漢字テストや計算テストのような小テストでもテスト直しをするようになります。弱点があるのは人間である以上ある程度は仕方ない、ただしそれを見逃すのではなく、適切に手当てをする。この姿勢を身につけられるかは、大学入試に代表される進路につながるだけでなく、一人の人間の資質として、大切な部分であると捉えています。