トビラをあけます part2
2月のコラム欄で、「右側のトビラを開けます」というタイトルで拙文をアップした。今回は、その第2弾である。
7月、中学3年生の東北研修旅行に同行した。初日は東京から一ノ関まで新幹線で行き、そこからクラスごとにバスに乗り換え、中尊寺、毛越寺などを巡るコースである。当日、新幹線は定刻に発車し、北に向けて順調にひた走る。仙台で乗務員が交代し、私たちもそろそろ下車が近づいてきたと思い始める。仙台を発車して最初の停車駅古川が近づいた際の放送で、私は「えっ」と言葉を発してしまうほど、驚いた。車掌が次のようにアナウンスしたからである。
「…左側のトビラを開けます」
2月のコラム欄にも書いたが、昨年12月に高校2年生に同行して関西旅行(高2の修学旅行は奈良京都を訪れるので、学内で関西旅行と称している)に行った際、京阪で聞いた「右側のトビラを開けます」が私の唯一の経験であり、これをまさかJRで、しかも新幹線で聞くとは想像していなかったからである。多くの鉄道では、
「お出口は右側です」「左側のトビラが開きます」
とアナウンスしている。古川の次のくりこま高原でも、我々の下車駅である一ノ関でも「…左側のトビラを開けます」であったことは言うまでもない。
2月にも書いたが、トビラを開けますというアナウンスから、私は力強さを感じる。車掌の「私が」開けますという主体を感じ、その背景には「私が」安全を守っていますという意志さえ感じる。表現が強めなのかあまり普及していないし、たまに耳にする程度だからいいのかもしれないが、背筋が伸びるような、すがすがしい印象を受けた。
JRのホームページには、お客様からの声を寄せるコーナーがあるので、そこに「車掌の放送にはマニュアルはあるのですか」という質問と共に、上記のような感想を伝えたところ、お返事をいただいた。
「頂戴しましたお声につきましては、関係箇所を通じまして対応した社員へ伝えさせていただきました。本人は、このようなお声を頂戴したことに恐縮するとともに、大変感謝しております。」
「お問い合わせいただいた車内放送についてですが、マニュアルはございますが、車掌が自ら考えてお客さまが求める車内放送を追加・工夫して実施しております。」
マニュアルはあるものの、車掌の創意工夫の余地も残っているようだ。
このようなアナウンスを行っているのがお一人なのか複数なのかはわからない。また出会う機会があればいいなと、その日が来ることを楽しみにしている。