校長コラム

秋雑感

 10月も下旬となりました。校長室の外からは、落ち葉を集めているのでしょうか、箒の音が聞こえます。秋だなと感じます。10月の上旬はまだ冷房を使うような気候でしたが、今や半袖では過ごせません。10月は寒暖の差が大きい月なんだと改めて感じました。今年の夏、猛暑が続いていた頃、このまま地球温暖化が進むと日本には四季はなくなるかもしれない、夏と冬の二季になるかもしれないという記事を目にし、驚きました。幸い、今年は秋がやってきました。学校の桜の枝からは落葉が始まり、残っている葉は日増しに少なくなっています。校庭のユリノキからも、大きい葉が一枚、また一枚と落葉しています。昨日は日曜日の説明会でした。多くの方にご来校いただきました。グラウンドは使われておらず、時々ユリノキの方からカサカサ音が聞こえる程度で、終日、静かでした。カサカサいう音は何だろう、落ちた葉が風に踊らされているのかと思いきや、2羽の鳩が落ち葉の間を歩き回り、何かをついばむ際の音でした。カサカサいう音が聞こえるほど、グラウンドは静かでした。金木犀も、その花の時期をあっという間に終えました。学校の金木犀、どういうわけか今年はあまり花が咲かず、楽しみにしていた私は拍子抜けでした。

 秋の日は釣瓶落としと言います。日没は今(10月30日)は16時49分ですが、このまま少しずつ早くなり、11月下旬から12月上旬にかけて16時28分まで早くなります(国立天文台のHPより)。今年はこれが最も早い日没の時刻です。今年の冬至は12月22日です。冬至は一年で一番昼間が短い日です。理科的には、「太陽の南中高度が最も低い日」「太陽の黄経が二七〇度のとき」という厳密な定義があるようですが、一年で一番昼間が短い日という説明が実生活に近いものです。この冬至の日が日没の時刻が最も早いのかと思いきや、実はそうではありません。意外でした。今年の冬至の日の日没は16時32分、最も早い時刻より4分遅くなっています。日の出の時刻は冬至後も少しずつ遅くなり、一番遅いのが1月上旬で6時51分です。これから先しばらくは、部活を終えて下校する17時には真っ暗になり、朝登校する際、家を早く出る人はまだ薄暗いうちに出る人もいるでしょう。季節は冬へと進みます。

 以前シンガポールに行った際、現地でお仕事をしている卒業生にお話しを聞いたところ、四季のありがたみを感じると言っていたのが印象的でした。シンガポールは北緯1度に位置する、ほぼ赤道直下の国です。一年中毎日、朝7時が日の出、夜7時に日没、最高気温はほぼ30℃という気候です。四季の変化がほとんどありません。それが社会生活にも影響していて、例えば大きな会議やお客様に会ったことを記憶する際、人はその時の気候も合わせて刷り込む傾向があることに気づいたと話していました。暑い日に会ったあの人とか、外では雪が降っていたあの会議室での会議、などのように、です。服装も、一年を通して大きな変化はないそうです。この夏、高校生33名がオーストラリアのアデレードに研修に行きました。帰国途中で立ち寄るシンガポールも含め、7月末から8月上旬にかけての11日間の研修です。7月8月は日本では真夏ですが、南半球のオーストラリアは真冬です。生徒からは、予想以上に寒く驚いたと聞きました。4年前でしょうか、研修を始めるにあたり私も現地の学校に挨拶に行きました。8月でも普通に学校が開いている風景に、夏休みでも学校に来るんだとつぶやいたところ、同行の教員から「今は夏休みじゃないから。夏じゃないから」と言われ、先入観に囚われている自分に気づきました。

 このところ秋晴れが続き、雨が降ったのはいつだったか、思い出せないほどです。秋晴れとは、晴れていて気温が高からず低からず、湿度も程よく、まさに爽やかな日々。〇〇晴れという言葉には、他に冬晴れ、五月晴れなどがあります。最近は使いませんが、以前は、日本晴れという言葉を使うことがありました。雲一つなく晴れ渡っている状態を言うようです。どうしてそれが日本晴れなのか。かつて「日本」という言葉を「最上」という意味で使っていた時期があったようです。「日本一」から来たようです。日本晴れとは、日本一の晴天、晴れの中でも最上位に位置するほど、雲一つない晴天、なのでしょう。ではなぜ使われなくなったのか。何か理由がありそうです。

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