桐朋女子ピックアップ

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2026年度始業式 歓迎の言葉

  • 全校

4月7日(火) 全学年が揃ってグラウンドで始業式が行われました。
在校生代表の「歓迎の言葉」を全文ご紹介します。

 やわらかな春風が私たちを取り囲む中、本日、六学年そろって今年度のスタートを迎えられることを大変嬉しく思います。赤の皆さん、紫の皆さん、桐朋女子中学校・高等学校へのご入学おめでとうございます。
 本日より新しい学校生活が始まります。この瞬間、皆さんはどのような気持ちでグラウンドに立っていますか。これから始まる学校生活に対する期待や楽しみ、あるいは変化する環境への不安。どちらの気持ちも混在していると思います。それは皆さんが新たな挑戦を前にしている証拠でもあります。授業や部活動、委員会の活動が始まると毎日が新しい体験の積み重ねでとても新鮮に感じられます。新たな経験が続くと日々の生活に没頭し、驚くほど速く時間が過ぎてしまうことがあります。充実した忙しい生活を謳歌することも大切ですが、新しい経験に気を取られてしまい、身近に潜む小さなことを見落としてしまいがちです。しかし、ここでいかにその小さなことに目を向けることができるかに学びの鍵やヒントが隠れています。先日、このことを実感できるあるものに出会いました。
 それは校内にある一本の桜の木です。被爆桜と言います。皆さんは被爆桜の存在をご存じでしょうか。生徒会高校執行部では昨年度、四回に渡って執行部の広報誌である「思奏」の作成と発行を行いました。二〇二五年度の最終号のコラムのテーマとして、高三青の先輩が被爆桜を題材にすることを提案してくださいました。私はそれまで被爆桜の存在を知りませんでした。桐朋女子にある一本のソメイヨシノの木。これは二〇〇九年に広島県広島市にある安田女子中学高等学校から受け取った桜の苗木が育ったものです。安田女子高校の敷地の中心には、一九四五年八月六日の原爆の中で生き延びた「被爆桜」があります。今から十七年程前、安田女子中高では、「平和や希望や生きるよろこびを広げよう」という思いから、桜の苗木を切り、交流のある学校に贈る取り組みが行われました。桐朋女子は、その苗木を受け取った学校の一つです。昨年度の冬、コラムに掲載する写真を撮影するため、被爆桜の木を探しに行きました。実際の桜の木を見ると、空に向かって真っすぐと伸びていました。しかし、寒さのせいもあり枝がとても細く、風で倒れてしまいそうな繊細さも感じられました。苗木を切る際、桜の木は余命わずかであったそうです。被爆桜を前にして私は実感しました。原爆の凄まじい爆風と熱線を何とか乗り越え、その後も懸命に生き延びて命を繋いだ被爆桜の生命力、それを支えた人々の力を。
 苦しい状況の中で前を向いて進み続けることは簡単なことではありません。逆境を耐え抜く力、自分の糧に変えていくマインドが必要になります。被爆桜が苗木として命を次の世代へ繋ぐことができたのは「人々の平和への切実な願い」があったからだと考えます。かつて一本であった被爆桜の木は今では全国七一カ所、八四本あることが確認されています。「戦争や紛争の絶えない世の中において、唯一の被爆国として原爆の記憶を次の世代へ確実に引き継いでいかなければならない。」「一本の桜の木から平和の願いを広めていきたい。」被爆桜を支えた人々のこのような思いが伝わり、被爆桜は生き延びて命を繋ぐことができたのだと思います。私は、こんなに身近に戦争の記憶を引き継ぐものがあったことは全く知りませんでした。平和への願いを象徴する被爆桜の発見は、今年度生徒会を引っ張るという挑戦において、私に一歩を踏み出していく勇気を与えてくれました。
 昨年、戦後八〇年を迎え、皆さんも八〇年前に思いをはせることもあったでしょう。私たちには戦争の記憶がありませんが、当時のことを知り学ぶことはできます。ぜひ、身近に潜む小さなことにも目を向けてみてください。そこで出会える発見には大きな学びが隠れているはずです。被爆桜は駐輪場へ行く道の東門のあたりで今年も美しい小さな花を咲かせています。これからも私たち桐朋生と共に成長を続けていくことでしょう。皆さんもぜひ探してみてください。
 赤の皆さん、紫の皆さん、そして在校生の皆さんにとって、それぞれが自分の花を咲かせることのできる一年間になることを心より願っております。新入生の皆さん、桐朋女子へようこそ。これをもって私の歓迎の言葉とさせていただきます。

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