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校長コラム

温度計の日

 5月14日は温度計の日でした。私が以前からこの日を知っていたわけではなく、校長講話で話そうとあるネタを追求していたところ、偶然知った次第です。そのネタは校長講話としてはボツにしましたが、今回は温度についての話です。

 5月になり、まさに夏のような暑さになる日もあれば、3月下旬に逆戻りしたような肌寒い日もあります。このような時期を経て夏に近づいていくのでしょう。暑いなぁ、今何度だろう?と気温が気になった場合、スマホがあればおおよその気温はわかります。スマホには温度計はついていませんから、その場の気温を測定することはできませんが、近くで測定しているところの気温はわかります。私が気になったのは、その表記です。24°のように表されます。違和感を覚える人もいらっしゃると思いますが、いかがでしょうか。

 単位が違っている、と私は常に思うのです。この「°」は角度を表す単位で、温度ではない、温度は℃だ、と思います。試験で気温を24°と書いたら減点されるのではないでしょうか。スマホでの表記はアイフォンでもアンドロイド系でも同じで、どちらでも天気のアプリを開くと、気温の単位は「°」です。サイトには、° でも度を表すことに違いはないからこれでも間違いはないというものもありましたが、どうも納得できません。何となくもやもやしているときに思い出したのは、温度の単位は℃だけではない、ということでした。

 アメリカでは、℃ではなく℉を使っています。℃は摂氏と呼ばれる一方、℉は華氏と呼ばれます。今華氏を使っている国はごく少数で、その少数派のアメリカでも、温度計には華氏と摂氏両方が示されているものもあるようです。スマホのアプリでも、摂氏と華氏は簡単に切り替えられます。24°は75°と変わります。単位を正確に表記すると、24℃と75℉になりますが、温度の単位を°で表すことで、単位はそのままにして、数字の部分だけ変えれば済む、そんなことが背景にあるのかも、と素人は想像しました。これが正しいかどうかはわかりません。

 温度を調べていく中で、更に驚くことがありました。高校で学習する、絶対温度です。-273℃という温度、理系の方は記憶にあると思います。理論上、分子や原子の運動が完全に停止する状態を絶対零度といい(厳密には今は異なる定義をしているようです)、分子や原子の運動が停止するので、これより低い温度は存在しない、そんな温度です。その温度を摂氏で表すと、-273℃(正確には-273.15℃)です。その絶対零度を0とし、1度の幅が摂氏と等しくなるように決められた温度が、絶対温度です。その単位は、K(ケルビン)です。摂氏や華氏にはCやFの前に°の記号がつきましたが、絶対温度の単位Kには、° はつきません。温度なのに°がつかないって、それは一体なぜ・・・?

 これに対するはっきりした答えは見つけられなかったのですが、調べたことから私が想像した理由は、以下の通りです。摂氏は、水の凍り始める温度を0(℃)、水の沸騰する温度を100(℃)として、その間を100等分して1℃と定義しています。華氏については、諸説あるようです。おもしろいなと思ったのは、「0(℉)は風邪をひいたときに使う氷枕の温度で、100(℉)は風邪で発熱したときの人間の体温」というものです。ヨーロッパで主に伝えられているそうです(現在は、水が氷になる温度を32(℉)、水が沸騰する温度を212(℉)とし、この間を180等分して1℉と定義しています)。いずれも基準となる箇所が2つあり、その間を等分しています。角度の1°も、円一周分を360等分した角度です。つまり、ある2つの基準点があり、それを等分したもの、という意味合いが、°には含まれているようです。絶対温度は何かを等分したという考え方ではないので、°は付けずにただ10Kのように表すようです(ですが、1967年までは10°Kのように°がついていました…)。

 スマホのアプリの疑問から調べ、考え、想像したことをまとめました。別の背景をご存知の方がいらっしゃれば、教えていただきたいです。なお5月14日が温度計の日と呼ばれるのは、華氏を考えだしたドイツの物理学者ファーレンハイトの誕生日が5月14日であることに由来するようです。

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