HOME > 校長コラム一覧 > オリオン座
校長コラム

オリオン座

 今年も12月末になり、残すところわずかとなった。暑かった夏も今は昔の話、学校の本館前の桜の葉もすべて落葉し、冬の佇まいである。12月22日は冬至。中国で古くから使われている暦、二十四節気の一つで、冬至を「冬に至る」と表すように、天文学的には冬至から冬になるそうだ。肌感覚としてはその前から既に冬真っただ中だが、学問には肌感覚を取り入れることはできない。冬至は、1年で太陽の南中高度が最も低くなり、昼の時間が最も短くなる日である。夏は夜の7時頃まで明るかったのに、最近は4時30分頃には薄暗くなる。冬至が一年で一番昼の時間が短いというと、朝の日の出の時刻が一番遅く、夕方の日没の時間が一番早いのかと思いがちだが、実はそうではない。その辺りについては、10月30日付けのコラムにまとめた。

 冬に夜空を見上げると、オリオン座が見える。横に3つ並ぶ星が目印になり、とても見つけやすい星座だ。普段星座を気にしない人も、オリオン座なら見つけやすいだろう。夜、東京でオリオン座が見え始めるのはおおよそ10月下旬。東の空にオリオン座が見えると、あぁ冬が来るんだなと私は感じる。冬の間は東から南の高い位置に見えるので、とても見つけやすいが、次第に西に傾き、4月下旬になると日没直後に西の空の低いところに見えるようになる。低いところなので、ビルなどに遮られ見つけにくいのか、4月のオリオン座の印象は薄い。

 調べてみて驚いたのが、実はオリオン座は7月上旬には見えているということだ。時間帯は夜ではなく、明け方。7月上旬の午前4時頃、東の空にオリオン座が見えているようだ。ただしインターネットのサイトで星空を見ただけなので、本当に見たわけではない。東の空の低いところに見えたとしても、建物が邪魔をして見にくいかもしれないし、夏は5時前には東から空が明るくなるので、見えたとしても見える時間帯は限られるだろう。その時間帯、私は起きていないのでなかなか見る機会がないが、朝型の人の中には気づいている人がいるかもしれない。オリオン座は俳句の世界でも冬の季語になっているように、多くの人はオリオン座と冬を関連させてとらえているだろう。早朝のその時間帯に起きて夜空を見上げる人は、昔から少ないのだろう。だが7月や8月の暑い頃でも、オリオン座は冬と同じように私たちを見ている。私が知らないだけだった。正確な事実を知らず、知っていることだけでオリオン座は冬のものと思い込んではいけないのだなと思い至った。視野は広く持たねばならない。

 オリオン座は、2つの1等星と5つの2等星を持つ、とても豪華な星座だ。1等星、2等星とは明るさの単位で、肉眼で見える一番暗い星が6等星、1等星はその6等星の100倍も明るい星で、全天で21個しかない。そのうちの2個がオリオン座にあるのだから、豪華と言えば豪華だ。その1等星の一つ、ベテルギウスが2020年の初め、暗くなったことがあった。元々明るさが変わる星だが、このときの暗くなり方は異常で、過去に観測例がなく、大爆発の前兆か、2等星に陥落かと言われた。その後、明るさを取り戻し、天文学者を安心させた。ベテルギウスにとっては、遠い宇宙のかなたで自分のことを心配している生命体がいるなんて予想もしないし、自ら光る恒星でない地球は、その存在さえ知られていないだろう。オリオン座は私たちが勝手につなげているだけだから、ベテルギウスは、見ず知らずの恒星と星座で関係づけられているなんて知る由もない。ということは、ひょっとしたらどこかの生命体は、太陽を巻き込んで星座を作っているかもしれない。私たちの知らないところで、どんなことが起きているのだろうか。想像は尽きない。

 皆さま、よいお年をお迎えください。

最上部へ