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校長コラム

スーパー カリ フラジリスティック エクスピアリ ドーシャス

 Supercalifragilisticexpialidocious . 余りに長いので、標題には、原文にはない空白を入れてみた。英語では一語で書くので空白を入れるのは正式ではないが、ここで示した5つの小さな単位に分解できるそうだ。この言葉、どこかで聞いたことがあるという方も少なくないだろう。1964年、実写とアニメを合成したウォルトディズニー制作のミュージカル映画「メリー・ポピンズ」で歌われた歌のタイトルである。1964年ということはちょうど60年前、この歌は今年で還暦を迎えたことになる。とは言え、全く色褪せてはいない。映画の中では「何と言ったら分からない時に言う言葉」と説明されているようだ。困ったときに唱えると、気分がよくなるおまじないのような歌だという。この単語自体は、言葉遊びの一つとして、映画ができる前から知られていたようだ。

 YouTubeで「スーパー…」で検索すると、様々な動画が出てくる。テンポのよい曲に合わせ、パフォーマンスも交えて歌うこの曲は、「この曲がパフォーマンス付きで歌えたらいいだろうなぁ」と思わせる曲の一つだ。この曲を、4月21日の音楽部合唱班の定期演奏会で、合唱班のメンバーが披露した。12名という決して多くはない部員で歌っているとはとても思えない声量である。一人ひとりがしっかり声を出しているのだろう。しっかり声を出すことは、一人ひとりが自信を持てないとできないことだと思う。自信がないと声が小さくなることは、多くの人が経験することだ。声量を感じたのはこの曲だけでなくすべての曲においてで、12名が自信を持って声を出せるまで練習しているのだと感じた。合唱班が披露した「スーパー…」は合唱曲としてアレンジされたもので、YouTubeで見るものとはまた違うものだ。美しいハーモニーだけでなく服装もこの曲に合わせて持ち寄った私服で、全体をかわいらしく表現しており、演奏後、大きな拍手が送られていた。4月の演奏会でこの曲を発表するようだということは12月から察知しており、私は密かに楽しみにしていた。前週に行われた、対象を生徒教員に限定したスプリングコンサートでも披露され、私は他の用事を調整し、見に行った。

 2022年の12月のミュージックフェスティバルでこの曲に挑戦したクラスがあった。ミュージックフェスティバルとは桐朋女子中学校の行事の一つで、中学3学年全15クラスがクラス毎に合唱を発表しその出来を競うコンテストである。2022年12月にこの曲を発表したのは中学2年生のあるクラス。歌うだけでなく、パフォーマンスも交えた発表だった。恥ずかしさとの戦いもあったようだが、演奏後はひと際大きな拍手をもらっていたことが印象に残っている。その前、2022年10月、桐朋女子高校音楽科のクラス発表においても、この曲に出会った。音楽科は各学年2クラスで、3年生になるとクラス毎にミュージカルを発表する。音楽科なので、演奏は歌だけでなく楽器演奏もすべて生徒による生演奏。とても迫力がある。ここでもパフォーマンスつきの迫力ある「スーパー…」に出会った。

 話を普通科に戻す。3月に、音楽部音楽班の定期演奏会が開かれた。定番の「アルヴァマー序曲」をはじめ数曲が発表され、ここでもよい時間を過ごした。アルヴァマー序曲は元々吹奏楽曲として作曲されたもので、それを弦楽器も交えたオーケストラ用に編曲し、音楽班では代々演奏を続けている。音楽班が演奏するアルヴァマー序曲は、桐朋女子中から女子高音楽科、桐朋学園大学作曲専攻に進み、現在作曲家・演奏家だけでなく指導者として教壇にも立っている遠藤真理子さんの編曲によるものだ。アンコールで再度アルヴァマー序曲が演奏され、この曲を最後に引退する高校2年生が自分のメインパートになると立ち上がって演奏していたのが印象的だった。

 音楽系だけでなく、運動部も4月から5月にかけて行われる大会が、引退がかかった大会である。先輩が引退をかけて臨むことは、後輩もよくわかっている。先輩と一緒に活動した時間を思い出しながら、先輩を送り出すために後輩としてできることを精一杯やるはずだ。今回の合唱班の定期演奏会には、多くのOGが来ていた。中には卒業後20年以上経っている方もいた。今回引退を迎えた学年とつながりがあるかどうかにかかわらず、集まったわけである。そこで、先輩後輩が旧交を温める場面もあったようだ。定期演奏会に顔を出すことで、気持ちは桐朋生に戻る。一つのことに学年を超えて取り組む、部活動・クラブ活動の賜物である。

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