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校長コラム

カヌーで世界選手権に出場

 カヌー。多くの人が聞いたことのあるスポーツですが、実際に経験したことがある人は、多くはないでしょう。今回は、そのカヌーの競技者である本校の高校2年生を取り上げます。表題にもあるように、今月末にポルトガルで行われる国際大会に、日本代表の一人として参加することになりました。先日、お話しを聞きました。インタビュー形式で紹介します。

Q「カヌーはいつからやっているのですか」

A「始めたきっかけは、中学2年生で東京都のトップアスリート発掘・育成事業に応募したことです(注:東京都のトップアスリート発掘・育成事業とは、オリンピックなどの国際大会で活躍する将来有望なジュニア選手を発掘し、育成・強化する事業で、2009年に始まりました。以来、毎年4月から5月上旬に募集されています)。学校で配られた育成事業を紹介するプリントをもとに家で母と相談し、応募しました(注:Aさん、中学は桐朋女子以外の中学校です)。そのときは陸上部に属していましたが、鳴かず飛ばずで(笑)、やるからにはトップを目指したいという思いがあり、挑戦してみたんです。育成事業のスポーツ能力テストが行われ、それを踏まえて希望の競技を2種類提出しました。ですが、希望には書かなかったカヌーのコーチから「適性がある」と誘われ、カヌーをやってみることを決めました。中学3年になってから本格的に練習を始めました」

Q「ということはキャリアは2年数カ月なんですね」

A「そうなんです。中3の時は慣れるのが精一杯で、試合に出始めたのは昨年度高1からです。他県の選手は小中学校時代から続けている選手も多いので、キャリアとしてはまだまだです。高2になって追いついてきた手応えを感じています」

Q「カヌーはオリンピックにもありますね」

A「はい。オリンピックにもあるしインターハイにも国体にもあります。カヌーには静かな湖面でタイムを競うスプリントと、変化に富んだ流れのある川を下るタイムと途中に設置されているゲートを通過する技術を競うスラロームがあります。スプリントで用いる舟には、カナディアンカヌー(立膝で漕ぐ)とカヤック(座って漕ぐ)の2種類あります。私が競技しているのはスプリントで、舟はカヤックです」

Q「漕ぐのは腕力が相当必要そうですが…」

A「腕力も必要ですが、脚力も腹筋も背筋もすべて必要で、カヌーは全身運動なんです。カヤックには体育座りのように足を少し曲げて座りますが、漕ぐ際に「足蹴り」と呼ばれている足の動きができるようになると、スピードが出せるようになります。でも最初は足蹴りどころかカヤックに乗っているだけで精一杯です。とても不安定なので、最初はみんな転覆するんです。転覆しないで乗れるようになるのに1年、そのあと足蹴りができるようになるのに半年くらいかかります(個人差はありますが)」

Q「Aさんも転覆したんですね」

A「もちろんしました。転覆したカヌーからの脱出は難しくはないのですが、一度転覆すると、舟の中の水を出すために岸までカヌーを運ばなければなりません。川は深くて足はつかないので、立ち泳ぎで運びます。その際、カヌーについている舵を傷つけないように気をつけなければなりません」

Q「カヌー部はあまり聞きませんが、都内の高校生でカヌーをやっている人はどのくらいいるんですか」

A「たぶん、都内の高校にはカヌー部はないと思います。女子は、私を含め3名しかいません。3人ともトップアスリート育成事業出身です。この3名が週に3回、江東区の旧中川でコーチのもと練習しています。江東区で中学生を選手として育成していて、一緒に練習しています。来年はその子たちが高校生になるので、楽しみです」

Q「インターハイや国体にもカヌー部門はあるということでしたね」

A「あります。都内の競技者は今は3名ですが、まず都大会を開き、そして関東大会を勝ち抜き、この夏は香川県坂出で行われたインターハイに出場しました。カヤックシングル200mと500mに出場しました。いずれも予選は突破しましたが、準決勝敗退でした。3年生の壁は厚かったです」

Q「それとは別の大会でカヌーマラソンにも出場したと聞きました」

A「そうです。距離が9000mというとても長い大会でした。京都北部の久美浜湾カヌー競技場という海に設定されたコースを3周する大会でした。カヌーマラソンには、途中でカヌーをかついで陸上に上がりカヌーを持ったまま走る「ポーテージ」というエリアが設定されています。カヌーは、水面まではなかなか声援が届かないのですが、ここは観客の声援が身近に感じられるエリアです。そしてここはコーチやサポートメンバーの伴走が認められているところで、アドバイスをもらいました。ポーテージエリアでDJが軽快に語る、エンターテイメント的な色合いの大会もあります」

Q「この大会でジュニアで2位に入り、国際大会にジャパンの一員として参加するんですね」

A「そうです。9月末にポルトガルで行われるICF世界カヌーマラソン選手権大会に出場します。国際大会は距離が18km、京都の大会の2倍です。そんな長距離は未経験なので、不安もあります。ですが、カヌーはヨーロッパではメジャーなスポーツなんです。日本でいうと、サッカーや野球のような位置づけでしょうか。カヌーマラソンの大会はエンターテイメントになっていると聞いているので、楽しんで参加できるといいなと思っています。ポルトガル語はわからないけど、みんな私のことを応援しているんだと思って(笑)、頑張ってきます!」

Q「Aさんにとってカヌーの魅力は何ですか」

A「カヌーはマイナー競技ですが、水面を自分の力だけで進めるのがとても面白いです。それに競技人口が少ないので、全国大会など上位大会に進めるチャンスが多く、全国に友だちができました」

 Aさん曰く、自分は競技を始めて日が浅く、筋力の面でもヨーロッパの選手に比べたら落ちるので結果は厳しいかも…とのことですが、結果はともかく、このような場に立てることが大きな経験になることは間違いありません。全国に広がった友だちの輪が、これを機会に世界規模に広がりますね。

 遠く日本から応援しています。

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