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ゴジラ 第一作(1954(昭和29)年)と桐朋女子 ―「平和への祈り」をめぐってー(1)

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 現在公開中の東宝映画「ゴジラ-1.0」が世界的に大ヒット中です。昭和29年の「ゴジラ」から70年、国内実写版30作品目のこのアニバーサリー映画、全米に続き全英でも興行成績No.1を記録、勢いは衰えずと報道にありました。VFX特撮技術の凄さもさることながら、心を揺さぶる人間ドラマの部分も素晴らしく、「いのちへのリスペクト」という普遍的価値を礎に据えた作品です。この映画の評判が人々の口コミ(SNS等)によって広がっている事実も嬉しいことです。困難な時代に於けるささやかな希望を感じます。
 先日、モノクロ版「ゴジラ-1.0/C」が新年1月12日から公開、と発表されました。明らかに白黒映画の初代「ゴジラ」へのオマージュですが、これを機に、桐朋女子と初代「ゴジラ」についての不思議なご縁を2回に分けて、概要と初公開情報のいくつかを紹介します。
 冷戦下の1954年、アメリカによるビキニ環礁での最初の水爆実験や第五福竜丸被爆事件を背景に製作された初代「ゴジラ」は、特撮担当(特殊技術:円谷英二)と本編担当(監督:本多猪四郎)がそれぞれ別々に撮影、統合して生まれた、特撮怪獣映画の金字塔です。同時に強い社会メッセージを世に問う戦後日本の象徴的作品として、今や誰もが知る存在です。
 映画の後半部、自らが発明した水中酸素破壊装置「オキシジェン・デストロイヤー」をゴジラ退治のために使うことを依頼された芹沢博士が、科学者の良心から拒絶するシーンがあります。その時、博士の実験室に置かれた白黒テレビの画面に、ゴジラに破壊された東京の悲惨な光景が映し出されます(本多監督は9年前の広島・長崎と東京大空襲をイメージした、といわれています)。男性アナウンサーの声「本日全国一斉に行われました平和への祈り、これは東京から送られるその一齣であります。しばらくはいのち込めて歌う処女たちの歌声をお聞きください」と前後して、大勢の女子生徒たちが厳かに合唱する映像が歌声と共に流れます。

「〽やすらぎよ光よ とくかえれかし 命こめて 祈る我らの このひとふしの あわれにめでて やすらぎよ光よ とくかえれかし 嗚呼」(映画より採録)。

 惨状の映像と祈りの歌に深く心動かされた博士は、ある決意のもとに恐ろしい装置を使うことを決意する、という展開です。この合唱は映画の終幕場面でも流れ、水爆実験が呼び覚ましたゴジラの死へのレクイエムの趣があります。「平和への祈り(Prayer for Peace)」のタイトルでオリジナル・サウンドトラックに収録されています。
 この重要なシーンに出演したのが今から70年前の桐朋女子の生徒たちです。撮影場所は「大講堂」と呼んでいた仙川の旧講堂でした。当時の桐朋生たちが大講堂で「平和への祈り」を歌う場面は、その後今日に至るまでゴジラが反核・反戦・平和を希う人々の逆説的なアイコンとなることを運命づけた、という意味で、世界の映画史上の決定的瞬間ともいえます。
 当時の学校新聞からの引用です。「これはゴジラをして水爆の恐ろしさを広く知らせる風刺映画であるとの解説の後、撮影にかかった。本校生徒出演は人々の永遠の平和への願いを女学生が”平和の歌“にたくして合唱する部分であり、又初めてのことでもあるので、むれるような暑さの講堂は、終始緊張した空気にみちていた。(やまみず34号1954年10月13日)」(続く)

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